悪魔が囁いた日(寸劇)


その日は早い時間から意識があったものの
身体が鉛の様に重く、
中々目を開ける事が出来ずにいました。



それでも私には
早く起きなくてはならない
気がかりな事があったのです

そろそろ起きてお弁当作らなきゃ…

気持ちは焦るけれど
やはりとてもとても身体が重くて
身体を動かす事も
目を開ける事さえ出来ません。



とにかく目だけでも開けよう。
と、気力を振り絞った時

地の底から
這う様な声が聴こえてきました。

「無理して弁当を作らなくてもいいんじゃないか?」

「え!ダメよ。
私は今節約中なの。
きちんとお弁当を作っていかなくちゃ。」

私はその声に反射的に応えてしまいました。
本来なら、その声の主を確かめなければいけない所ですが、
身体が重く、頭も朦朧としていた為に、
それ以上の疑問はどうでもよくなってしまいました。

地を這う様な声は続けました。
「最近毎日作っていたんだ。たまにはいいじゃないか。」

「その考えがダメなのよ。
もし今日いいや。と思ってしまったら、
明日もいいやって思ってしまうわ。
今日を許さない事が大切なの。」

「クックック」
「果たして、その考えでうまく行った事はあったかな?」

「ど、どういう意味よ!」

「いやいや、
今まで、頑張れば何とかなると思って来て、
続けて良かった事なんてあったかい?」


そこで私は口をつぐみました。

ブラック企業に就職した時、
バイトなのに店長をやらされていた時、
一番欲しかったお金は手に入らなかった。

地を這う声は続けました。
「なんでもかんでも頑張る必要はないさ
今日は休んでもいい日なんだ。
弁当の事は忘れるのがいい。」

地を這う様な声は、
少し優しく感じました。

私はその声にとても安心してしまい、
今日は弁当を作らないと決め、
もう一度布団に中に顔を埋めたのです。






その声が悪魔の声だったと気づいたのは、
お昼にコンビニで財布を開けた時でした。

明日から、
きちんとお弁当作ろう!


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